
今回は初心者の方向けに、株で利益を出すには欠かせない「移動平均線」という指標について解説します。
株価チャートを見たとき、移動平均線があることにより、株価の流れがスムーズにわかるようになります。チャートを見ながらトレードする人なら、ほとんどの人が使っているであろう重要なテクニカル指標のひとつです。
ローソク足と組み合わせることで、現在の株価がどういう状況なのか、相場がどんなトレンドにになっているかがわかるので、これを使わない手はありません。
そんなとてつもなく大事な「移動平均線」について、この記事で詳しく解説していきます!
移動平均線とは?
移動平均線とは、決まった期間にある株価の終値を見て、その平均の数値を結んだ「線」のことです。つまり、ローソク足だけではわかりづらかった、株価の平均値の「流れ」が一本の線でわかりやすく見られるようになるわけです。
具体的には、移動平均線を表示する当日から何日間、決まった日数をさかのぼります。その日から当日までの終値の平均値を結んでいくと、一本の線となり、グラフとして表示されます。

日数を「移動平均線」の前につけて、「〇〇日移動平均線」と言うことが多いです。5日間の平均を取るのであれば、「5日移動平均線」となります。
移動平均線の計算方法
N日間の移動平均値を求めたい場合、
- 当日からN日分の終値を足して、Nで割る
と、平均が求められます。
たとえば、5日移動平均だったら、当日から数えて5日分の終値の平均を取ります。
仮に10日前からの移動平均を求める場合、1日ずつずらして計算していきます。
- 1~5日目までの終値をすべて足して、5で割る
- 2~6日目までの終値をすべて足して、5で割る
- 3~7日目までの終値をすべて足して、5で割る
- 4~8日目までの終値をすべて足して、5で割る
- 5~9日目までの終値をすべて足して、5で割る
- 6~10日目までの終値をすべて足して、5で割る
上の計算で出た値に点を打ち、その点を結んだものが、「移動平均線」となります。上記の例でいくなら、赤字の数字を結んでいくことになります。
計算式を紹介はしましたが、実際あなた自身が計算する必要はないので、安心してください。チャートツールが勝手にグラフを作ってくれます(笑)
計算方法は、こんなものなんだという参考にしてください。
移動平均線の英語
移動平均線を英語にすると
“Moving Average”
となります。
- Moving=移動
- Average=平均
ですね。
これの頭文字を取って省略すると「MA」となります。移動平均線と書くと漢字5文字で長いので、「MA」と書く人が多いです。
さらに日数を入れたい場合は、数字を先頭につけて「5MA」とか「25MA」と書くことができます。「5日移動平均線」と言うより、はるかにラクですね(笑)
移動平均線の見方とメリット
それでは、移動平均線の基本の見方と、そのメリットを解説します。
1.現在まで株価の流れがわかる
移動平均線を使う一番のメリットは、「株価の流れがわかる」ということです。
よく売買日記でも、「流れ」「流れ」と言っていますが、流れとはつまり、
- 今の株価になるまで、株価がどういう動きをしてきたのか
という、軌跡のことです。
以下のチャートを見比べてみてください。
ローソク足に移動平均線を表示させていない状態と、表示させた状態です。
移動平均線を表示させているほうが、明らかに流れがわかりやすいと思います。
見方としては、
- 移動平均線が上を向いていれば上昇の流れ
- 移動平均線が下を向いていれば下降の流れ
となります。
上の画像を見ると、移動平均線が明らかに右肩上がりになっているのがわかりますよね。
このように、パッと見て、すぐに株価の流れを見るのが、移動平均線の役割になります。
2.転換のポイントが見える(乖離率を見る)
移動平均線のもう一つのメリットは、「トレンドが転換するポイントが見える」ということです。
- ずっと上昇トレンドで来ていた株価が、下降トレンドに変わる
- ずっと下降トレンドで来ていた株価が、上昇トレンドに変わる
こういった、トレンドが変わるタイミングをだいたい見極めることが可能です。
そのためには、「乖離率」というものを見ていきます。
乖離率とは、
- 現在の株価が、移動平均線よりどれだけ離れているか
を示したものです。
この乖離率が大きくなったとき、すなわち移動平均線から株価がものすごく離れてしまったとき、株価が反転して逆戻りする可能性が高くなります。
このように、移動平均線から株価が離れた場合は、トレンドが反転する可能性を疑ってみましょう。
具体的に何パーセント離れればよい、という数値はないので、それぞれの銘柄でクセを探る必要があります。
たとえば、(たとえばですよ!)
- 銘柄Aは25日移動平均線から10%離れると、転換する傾向にある
- 銘柄Bは13週移動平均線から5%離れると、転換する傾向にある
といった具合です。
移動平均線の使い方
それでは、移動平均線の特徴とともに、具体的な使い方について見ていきましょう。
移動平均線の出し方
お使いの証券会社のチャートツールを開けば、自動的に移動平均線が表示されていることが多いです。最初から設定されているということですね。
もし出ていなければ、チャート設定で「移動平均線」や「単純移動平均線」を選んで、表示させれば出てくるはずです(「単純」じゃない「移動平均線」もあるので、注意してください)。
移動平均線はローソク足の種類(週足や日足など)によって変わってきますので、それぞれのチャート画面で設定してあげてください。
移動平均線の期間について
移動平均線は基本的に、複数の線を組み合わせて使うことが多いです。複数の線を組み合わせることにより、より株価の流れがわかりやすくなるからです。
たいていの場合は、
- 短期の線
- 中期の線
- 長期の線
の3つをあわせて使います。
問題は3つの線の「日数」の設定ですが、決まりはまったくありません。あなたの使う手法に応じて、自由に設定することになります。
と、言われてしまうと、最初はどうすればいいかわからないと思うので、だいたいの目安を下記に記します。
- 週足チャートの場合:13週、26週、52週移動平均線
- 日足チャートの場合:5日、25日、75日移動平均線
- 5分足チャートの場合:6本、12本、24本移動平均線
もちろんこの通りである必要はまったくありません。
特にこだわりがなければ、チャートツールを開いたときにデフォルト(初期設定)で決められている数値にしておけば大丈夫です。つまり、特に自分で決めたものがない限りは、数値はいじらなくても大丈夫です。
結局のところ、
- 短期の線
- 中期の線
- 長期の線
の3つの線がしっかり離れていて、複数の線として機能すれば問題ないわけです。
移動平均線の特徴
移動平均線を見る際にポイントとなる特徴を、2つ紹介します。
1.複数の線が同じ向きなら、より強いサインになる
複数の線を使うと、トレンドの強さに信頼が持てるようになります。
3本の線を表示させた場合、
- 3本とも上を向いている場合
- 2本が上を向いている場合
- 1本だけ上を向いている場合
の3択なら、確実に「3本とも上を向いている場合」のほうが、強力なサインとなります。
今回の場合でいえば、「上昇トレンドに入っている」と強く言えるわけです。
トレンドの強さを見るためにも、複数の線をあわせて使うことをオススメします。
2.短期の線ほど、早く動く
移動平均線の大きな特徴は
- 短期の線が、長期の線よりも早く動く
ということです。
たとえば、5日移動平均線と25日移動平均線を見比べた場合、動きが早いのは5日移動平均線になります。
動きが早いということから、何がわかるのか。それは、短期線の向きが変われば、長期線もその後を追いかける可能性があるということです。
たとえば、短期と長期の2本の移動平均線が、ずっと下向きになっていたとしましょう。誰がどう見てもわかる「下降トレンド」です。
そこでふと、5日移動平均線の向きがちょっと上を向いたとします。短期線のほうが早く動くので、もしかしたらこの後、「25日移動平均線も上を向くかもしれない」と、考えることができるわけです。
この性質を知らないと、「5日移動平均線は上を向いたけど、25日移動平均線は下だから下降トレンド継続だ」と割り切ってしまうかもしれません。25日移動平均線が下向きだからといって、下降トレンドだと断定してしまうのは、まだ早いということです。5日移動平均線のほうが早く動くので、25日移動平均線は「まだこれから動く」かもしれないのです。
このように、短い日数の移動平均線のほうが、長い日数の移動平均線よりも早く動くという特徴を、ぜひ覚えておいてください。それによって、今後の株価がどう動くか、そのシナリオがたてやすくなるはずです。
移動平均線を使った株の売買テクニック
それでは、実際に移動平均線を使った売買のやり方を2つほど紹介します。
先に注意しておくと、この通りにやれば勝てるわけではありません。
あくまで「目安」として、売買のタイミングを計る参考程度に見ていただければ幸いです。
ゴールデンクロスとデッドクロス
まず、移動平均線の「クロス(交差)」でタイミング判断する2つの指標があります。
- ゴールデンクロス(Golden Cross)
- デッドクロス(Dead Cross)
です。
ゴールデンクロスとは、短い移動平均線が長い移動平均線を下から上に突き抜けることです。

先ほども書いたように、短い線は長い線よりも早く動きます。したがって、短い線が長い線を下から突き抜けると、そこから株価が上昇していくサインとなります。
もちろん、ゴールデンクロスした後にまたすぐ落ちてしまうこともあるので、100%ではありません。
これはいわゆる「だまし」というやつですが、だましは頻繁に起こるので、注意してください。
デッドクロスは反対に、短い線が長い線を上から下に突き抜けることです。

ゴールデンクロスとは逆で、上から下に抜けると、そこから株価が下落していくサインになります。
こちらも、100%確実は言えないので注意してください。
決して、ゴールデンクロスやデッドクロスだけを見て、売買しないよう気をつけてくださいね!あくまでも「目安」です。
グランビルの法則
移動平均線を使った有名な売買のやり方で、「グランビルの法則」と呼ばれるものがあります。
英語では、“Granville’s law” や “Granville’s 8 rules” と呼ばれます。
アメリカのJ.E.グランビル(Joseph Ensign Granville)さんが提唱したので、グランビルの法則です。
買いのタイミング4つと、売りのタイミング4つを示した、合計8パターンの売買タイミングを見るものになります。
グランビルの法則では、
- 200日移動平均線
- 株価の終値
の2つを使って、売買のサインを探っていきます。
グランビルの法則 買いパターン1
200日移動平均線がずっと下降していて、ちょっと上を向いてきたときに、株価が下から上に移動平均線を突き抜けるときに買い。
下降トレンドから、上昇トレンドへ反転する瞬間を狙います。
グランビルの法則 買いパターン2
200日移動平均線が上昇し始めたとき、株価が移動平均線を上から下へ少し割り込んだところで買い。
上昇する手前の、「押し目買い」を狙うパターンです。
グランビルの法則 買いパターン3
株価が200日移動平均線よりも上にあるとき、株価が少し落ちて移動平均線スレスレで反発するところで買い。
移動平均線を割りこまないで反発する瞬間を狙います。
グランビルの法則 買いパターン4
株価が200日移動平均線から、かなり下にあるとき(ものすごく乖離したとき)に買い。
売りに売られて、売り枯れたところを狙うやり方です。
グランビルの法則 売りパターン1
200日移動平均線がずっと上昇していて、ちょっと下を向いてきたときに、株価が上から下に移動平均線を突き抜けるときに売り。
上昇トレンドから、下降トレンドへ反転する瞬間を狙います。
グランビルの法則 売りパターン2
200日移動平均線が下落し始めたとき、株価が上昇して、移動平均線を上に抜けたところで売り。
下落する手前にいったん上昇して、反発するタイミングで「戻り売り」を狙います。
グランビルの法則 売りパターン3
株価が200日移動平均線よりも下にあるとき、株価が上昇するも、移動平均線スレスレで反発するところで売り。
移動平均線を上に抜けきれないで、下がってしまう瞬間を狙います。
グランビルの法則 売りパターン4
株価が200日移動平均線から、かなり上にあるとき(ものすごく乖離したとき)に売り。
買いがつづいて、過熱した株価が売られる瞬間を狙います。
買いパターンと売りパターンがありますが、買いと売りはそれぞれ対になっているので、反対のことをやると考えてもらえばOKです。
まとめ
以上、今回は株価の「移動平均線」について、解説させていただきました。
移動平均線は、株価の流れが一目でパッと見えるすばらしいテクニカル指標です。チャートを見るときには、ローソク足とあわせて表示して、いつも株価の流れを気にしてトレードしていきましょう。
- 現在のトレンド
- トレンドが転換するポイント
この2つの目安になるので、ぜひ活用してください。
具体的な活用方法として、
- ゴールデンクロスとデッドクロス
- グランビルの法則
というテクニックも紹介させていだきました。
売買のタイミングを計るとは言いましたが、この通りに売買すればいいわけではありません。多くの「だまし」が存在するので、あくまでも目安として見ていってくださいね。
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!